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「AIエージェントマネージャー」という職種、聞いたことありますか?
2026年2月にHarvard Business Review(以下HBR)で取り上げられたこの役割、簡単に言うと「AIを『道具』として使う人」ではなく「AIという『チームメンバー』を束ねて成果を出す人」のことです。
HBRの記事では、Salesforceの事例が中心に紹介されています。同社のAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」では、数十体のAIエージェントが顧客対応やメール作成などを担っていて、問い合わせの約74%を自律的に解決しているそうです。
ただ、AIを入れただけでそうなったわけではなくて、エージェントマネージャーと呼ばれる人たちがAIの動きを毎日モニタリングし、指示の出し方やワークフローを改善し続けた結果、ここまでの成果につながったとのこと。かつてソフトウェア革命がプロダクトマネージャーという職種を生んだように、AI時代にはこのエージェントマネージャーが不可欠になる——というのが、記事のざっくりした主張です。
なんだか未来の話に聞こえるかもしれませんが、実はIDEATECHでは、すでにこの役割で日々仕事をしています。今回は、その中身を少しお話しさせてください。
まず、IDEATECHって何をしている会社?
IDEATECHは、企業のPR・マーケティングを「調査データ」で支援する会社です。
たとえば、「20代女性の○○に対する意識調査」のような調査を企画して、実際にアンケートを取って、その結果をプレスリリースや記事として世に出す。企業が「うちの商品、実はこんなに支持されてるんです」と根拠を持って発信するための、その「根拠づくり」を私たちがお手伝いしています。
この仕事には、調査の企画書をつくる、アンケートの質問項目(調査票と呼んでいます)を設計する、集まったデータをまとめてレポートにする、といった工程があります。ここに今、AIエージェントが本格的に入ってきました。
AIが「作業する側」になった
何が変わったかというと、これまで人間が一つひとつ手を動かしていた作業を、複数のAIがチームを組んでこなすようになったのです。具体的には、「企画を考えるAI」「その企画をチェックするAI」「最終判断を下すAI」が順番に動いて、一つの企画書を仕上げていく。人間のチームと同じような役割分担が、AI同士の間で成り立っています。
企画書だけじゃなく、プレスリリースの下書き、過去の問い合わせ対応をまとめたナレッジベースの構築、データ集計の自動化なんかも、社内の色々な場面でAIが動いています。
で、ここで出てくるのが「じゃあ誰がそのAIたちを見るの?」という問題です。
私の仕事は、AIの「上司」みたいなもの
AIは優秀ですが、放っておくと的外れなことをやったりもします。クライアントが求めているニュアンスとズレた企画書を出してきたり、質問の聞き方が偏っていたり。人間と同じで、ちゃんと見てあげないといい仕事はしてくれません。
だから、朝まずやることは、AIが作った成果物の確認です。「この企画書、ちゃんとクライアントの課題に合ってるかな」「質問の聞き方に誘導が入ってないかな」。そういうチェックから一日が始まります。
問題があれば、AIへの指示の出し方を調整したり、作業の流れそのものを組み替えたりする。新しい案件が来たら「この案件にはどのAIをどう組み合わせるか」を考えるのも仕事です。
あとは、社内メンバーへのAI活用の研修もやっています。「AIって難しそう」と構えていた人が、実際に触ってみて「え、これめちゃくちゃ便利じゃないですか」と言ってくれる瞬間が、個人的には一番うれしいですね。
意外と、エンジニアの仕事じゃない
「AIを管理する」と聞くと、プログラミングがバリバリできる人の仕事だと思われがちです。でも、実際に一番大事なのは「業務をわかっていること」なんですよね。
HBRの記事でも、Salesforceで最初にこの役割に就いた人はエンジニアではなく、カスタマーサポートの現場を長くやっていた人だったと紹介されています。技術より、「いい仕事って何か」を肌で知っていることの方がずっと重要だったと。
IDEATECHでも同じで、「この企画、クライアントに刺さるかな」「この質問項目だとバイアスかかるよね」という判断ができることが、何よりも大切です。AIへの指示を改善するにしても、「正解」がわかっていなければ直しようがないので。
業務の理解があること。そして、新しいものを「とりあえずやってみるか」と触れるオープンさ。正直、この2つがあれば十分スタートラインに立てると思っています。
AIと人間、得意なことが違う
やっていて思うのは、AIと人間は得意なことが全然違うということです。
AIは、大量の情報を整理したり、パターンに沿った文書を素早く生成するのがうまい。一方で、クライアントが本当は何に困っているのかを察したり、数字の裏にある文脈を読み解いたりするのは、まだまだ人間の出番です。
「どこまでAIに任せて、どこから人間がやるか」。この線引きを考えて設計するのが、この仕事の一番面白いところかもしれません。
IDEATECHが考えるAIエージェントマネージャーとは
じゃあ結局この役割って何なの、というのを私たちなりにまとめると、「AIエージェントを『プロダクト』として捉えて、その設計・運用・改善に責任を持つオペレーションリーダー」という言い方が一番近いと思っています。
イメージとしてはPdM(プロダクトマネージャー)に近いです。PdMがプロダクトのKPIを追って、ユーザーの声を聞いて、改善を回し続けるように、AIエージェントマネージャーもAIという「プロダクト」に対して同じことをやります。
やっていることを分解すると、大きく3つです。
- 品質オペレーションAIが出してくる成果物の品質にばらつきが出るのは避けられません。だから、品質の基準を決めて、モニタリングして、基準を下回ったら原因を特定して直す。このQA(品質管理)サイクルをAIの成果物に対してずっと回し続けています。
- ワークフロー設計どの作業をAIに振って、どこで人間が判断を入れるか。複数のAIをどういう順番で連携させるか。ワークフロー全体を設計するのは、まさにオペレーション構築そのものです。
- 継続的な改善AIのモデルも日々変わるし、クライアントのニーズも変わる。だから「完成」がないんです。毎週、指示の出し方やワークフローを見直して、試して、結果を見て、また直す。このサイクルを止めないことが仕事の核です。
この3つを回しながら、社内全体にAIエージェントの活用を広げていくための研修や仕組みづくりも担う。「一部の人だけがAIを使える」状態ではなく、組織として当たり前にAIと協働できるようにしていく。それが、私たちの考えるAIエージェントマネージャーです。
IDEATECHとしてのこれから
IDEATECHでは、AIエージェントマネージャーを今後の事業に欠かせない職種として育てていく方針です。
HBRの記事では「12〜18ヶ月以内に標準的な役職になる」と書いていましたが、正直なところ、今この瞬間にこの肩書きで仕事をしている人はほとんどいません。だからこそ先にやる意味があると思っています。AIをただ入れるだけじゃなく、「AIが出すものに責任を持つ人」がいることで、クライアントに届けるリサーチの質を守っていける。それがこれからのIDEATECHの強みになると考えています。
まだ誰もやったことがない職種を、自分たちで定義して作っていく。そこに面白さを感じる方がいたら、ぜひ一度話を聞きに来てください。
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著者
上原 希乃香(うえはら ののか) | IDEATECH 業務委託
2023年にIDEATECHへ新卒入社。リサーチ業務を経験した後、CS対応やクライアントとの直接のやり取りを担当。現場での業務経験を土台に、現在は業務委託としてAIエージェントが生成する成果物の品質チェックや、AIを活用したワークフロー全体の設計・改善に携わっている。
参考文献
Suraj Srinivasan & Vivian Wei, “To Thrive in the AI Era, Companies Need Agent Managers,” Harvard Business Review, February 12, 2026.