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// 北川裕康のマーケティング再考

MQLが死んだ今、私たちが考えるべき「THE NEW MODEL」

マーケティングAIBtoBセールス
// INDEX
  1. MQLが死んだ、2つの要因
  2. 1. 生成AIによる「情報収集・意思決定」の劇的な変化
  3. 2. バイヤーの購買チームの肥大化と意思決定の停滞
  4. THE MODELもまた、無事ではない
  5. THE NEW MODELとは何か
  6. ① 抜本的なLLM対策
  7. ② バイヤーからのシグナルを検知する
  8. ③ 複数ソースからコンタクトを獲得する
  9. ④ DSR(Digital Sales Room)で購買チーム全体を誘導する
  10. ⑤ 有効性を評価して、ようやくアプローチする
  11. なぜ、今か

海外ではすでに「MQLは死んだ」と言われています。衝撃的に聞こえるかもしれませんが、日本でもまったく同じ地殻変動が起きています。

その要因は大きく2つあります。

MQLが死んだ、2つの要因

1. 生成AIによる「情報収集・意思決定」の劇的な変化

皆さんも何かを購入する際、仕事でもプライベートでも、まずは生成AIで調べませんか? B2Bバイヤーも同様です。課題解決の手段から候補ベンダーの絞り込みまで、AIを活用して自己解決する時代になりました。IDEATECH社との共同実態調査を見ても、購買ジャーニーの初期〜中期ステージで生成AIがすでに深く浸透しています。

その結果何が起きているか。リード獲得を狙ったイベントやデジマ施策に、そもそも顧客が足を運ばなくなっています。それと、これも先の実態調査で明らかなように、顧客は水面下で候補を3社程度に絞り込んでいます。その候補ベンダーの調査を行うために、バイヤーはイベントにいきます。この選考から漏れたベンダーは気づくことすらできない——まさに「ステルス失注」です。

2. バイヤーの購買チームの肥大化と意思決定の停滞

製品の高度化・複雑化に伴い、IT製品の導入には利用部門だけでなく、情報システム・DX推進・法務・セキュリティ・購買など多くのステークホルダーが関わります。

実態調査では、58.5%が「検討・意思決定の関与者が7名以上」、10.2%が「15名以上」と回答しました。ベイン・アンド・カンパニーの調査によると、意思決定者が7名になると決定の有効性が落ち始め、12名を超えると有効性は半減します。

つまり、現場の1名からMQL(リード)を獲得し、その1人に一生懸命テレアポや営業をかけたところで、商談化すらしないのです。

THE MODELもまた、無事ではない

さらに、近年では営業を介さずに検討を進める「No-Rep(Rep-Free)購買」が主流になりつつあります。営業に売り込まれたくないのです。Z世代が増えているのも、その要因の1つです。そもそもが、B2Bバイヤーが購買プロセス全体でベンダーと直接接点を持つ時間は、全体のわずか17%にすぎません(出典: Gartner)。顧客は、営業を避け、自律的に動いています。

MQLが機能不全に陥っている(死んでいる)以上、旧来の直列型プロセスであるTHE MODELが無事なわけありません。

今求められているのは、この購買行動の変化に適応した「THE NEW MODEL」です。このネーミングには少し皮肉も込めています。そもそもTHE MODELという世界標準のモデルは存在しないからです。知らなかったでしょ?

THE NEW MODELとは何か

THE NEW MODELは、どのようなモデルかというと、米国では次のようなプロセスになって来ています。

  • 抜本的なLLM対策
  • バイヤーからのシグナルを検知(代表ツール: 6sense、HubSpot Warmly)
  • 複数ソースからの特定バイヤーのコンタクト獲得(代表ツール: Clay)
  • 個別アカウントごとのDSR(Digital Sales Room)作成と発行(代表ツール: Aligned)
  • DSRでの顧客からの問い合わせ、または、AI Readiness Scoreで有効性を評価してアプローチ

なんかチンプンカンプンですよね。少し解説します。

① 抜本的なLLM対策

LLMから推奨されないと候補ベンダーになりません。バイヤーが営業担当者に最初に接触した日(Day 1)の時点で、すでに検討候補として頭にあったベンダーが最終的に受注に至る確率が95%という調査もあります(出典: 6sense Research)。また、53%の回答者が、生成AIを使って製品の比較表を作っています(出典: 最新のIDEATECH実態調査)。ですから、LLMで自社に有利な結果が出るように、自社Webサイトを生成AI対応にしたり、比較軸で製品の機能を向上したり、自社が比較で有効となる比較軸を学習させたりする必要があるのです。これはマーケティング単独で対策できることではなく、製品戦略まで含む経営課題だと私は考えています。

② バイヤーからのシグナルを検知する

そして、リードではなく、バイヤーからシグナルを捉えます。シグナルは、インテントを含む、顧客が発する次のような信号になります。検索や製品比較サイトのインテントを獲得するだけでは不十分なのです。そもそも検索しなくなっていますからね。

  • インテント・シグナル: 外部比較サイトや自社サイトの料金・技術ページを短期間に複数回閲覧した動き
  • 組織・人員シグナル: 役員着任・求人開始・資金調達など、企業の外部ニュースのリアルタイム検知
  • バイヤーチーム活性化シグナル: DSRへ同一企業から法務・財務などの新規権限アカウントがログイン・閲覧した動き

③ 複数ソースからコンタクトを獲得する

次に、一次情報のCRM内のコンタクトだけでなく、外部ソースも含めて、シグナルを発しているバイヤーのコンタクト情報を取得します。ここが日本の壁です。Opt-Inの国ですから、コンタクト情報が流通していません。また、LinkedInを使ったソーシャルセリングも、ほとんど効果を発揮しないです。結局、コールドコールか、という悲しい議論になります。BDRの能力や新規コンタクト獲得の活動が大事です。

④ DSR(Digital Sales Room)で購買チーム全体を誘導する

最後に聞き慣れないDSR(Digital Sales Room)です。DSRは、以前からあった個別Webポータル作成ツールとコンテンツ管理プラットフォームがAIによって進化したテクノロジーです。非常に注目されているSales Techです。このDSRは、日本でも登場し始めています。DSRでシグナルを検知した顧客用に専用のWebポータルを作成して、そこに、役割ごと、購買ステージごとに、コンテンツを置いておきます。そして、シグナルを検知したバイヤーのコンタクトに、この個別Webポータルを案内するのです。役割ごとにコンテンツを置き、購買チーム全体を誘導していきます。事例紹介などのWebinarも、こちらから案内するのが効果的です。AIエージェントがそこには配置されて、バイヤーからの質問に答えます。コンテンツへのアクセスでフォームはなく、裏からコンテンツのアクセス状況などを観察します。

⑤ 有効性を評価して、ようやくアプローチする

DSR経由での顧客からの問い合わせ、または、AI Readiness Score(複数のソースから顧客が連絡OKかをAIが判断)で有効性を評価して、ようやくバイヤーにアプローチするのです。顧客主体のバイヤー体験を実現しつつ、どう自社に有利に運ぶかの作戦になります。

なぜ、今か

日本でも、同じようなTHE NEW MODELの構築を進める必要があります。しかも、自社に最適なモデルです。なぜ、今か?それは、顧客は、今、生成AIを使って購買プロセスを進めているからです。

なお、このようなTHE NEW MODELの構築もありますが、一番の解決方法は、アカウントマネージャを擁して、重要な顧客には張り付くことです。そして、潜在的な課題に対して、提案を行い、プロジェクト化をしてもらい、プロジェクト成功まで寄り添うことです。ただ、これには多大なリソースや幅広い製品ポートフォリオが必要になります。ですから、多くのベンダーでは、THE NEW MODELが必要になるのです。

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