メインコンテンツへスキップ
// 北川裕康のマーケティング再考

「知らぬ間に候補から消えている」時代の歩き方——BtoBバイヤーの過半数がAIから調査を始める現実と、マーケッターが打つべきLLMO

BtoBマーケティングAI
// INDEX
  1. 姿なき失注:「サイレント・ショートリスト」の恐怖
  2. 日本のBtoB市場だからこそ効く、4つの勝ち筋
  3. アプローチ1:Google系AI Overviewsを攻略するサイトの機械可読化
  4. アプローチ2:ChatGPT / Perplexityを攻略する客観的裏付けと第三者言及
  5. 最終的なゴール:指名検索を取りに行く
  6. これはマーケティングではなく経営問題

最近、自社サイトへのSEOやリスティング広告からの流入が減っていませんか?

「BtoBソフトウェアバイヤーの51%が、従来のGoogle検索ではなく、AIチャットボット内でベンダー調査を開始している」米G2のこの調査データを目にしたとき、率直に言って「いよいよここまで来たか」と感じました。わずか1年でAIによるベンダー調査の開始は29%から51%へと22ポイントも急増。ソフトウェアを探す意思決定者の過半数が、ブラウザの検索窓ではなく、ChatGPTやPerplexityのプロンプト欄を「最初の接点」に選んでいます。「それはアメリカの話でしょう?」と思うかもしれません。しかし、現実は違います。

IDEATECHが日本のBtoBバイヤー502名を対象に実施した実態調査(「生成AI時代のBtoBバイヤー購買行動に関する実態調査」2026年8月7日〜8月19日)では、日本でもバイヤーの90.6%が製品・サービス選定において生成AIを利用していると回答しました。「ほぼすべての工程で利用した(18.9%)」「多くの工程で利用した(45.0%)」を合わせると、すでに63.9%に達します。さらに驚くべきは、候補製品の比較検討において53.8%が「生成AIを使って社内比較表を作成した」と回答している点です。生成AIが実務に浸透してまだわずかな期間でこの数字です。今後どうなるかは想像に難くありません。

マーケターとして、そして現場で戦略を引く人間として、この変化が何を意味するのか。結論から言えば、「自社サイトを見てもらう前に、検討の土俵から落とされる時代が始まった」ということです。

姿なき失注:「サイレント・ショートリスト」の恐怖

従来のBtoBマーケティングは、検索結果の上位を取ってLPに誘導し、ホワイトペーパーを落としてもらい、インサイドセールスが追う……という導線が基本でした。しかし、AIを入り口にするバイヤーはそんな旅筋をたどりません。彼らはプロンプトにこう打ち込みます。「〇〇業界向けで、初期費用を抑えられ、〇〇ツールとAPI連携できるサービスを3つ挙げて、比較表を作って」AIはその場で要約し、候補を提示します。5秒もかかりません。

ユーザーが自社サイトを訪れる前、資料請求フォームに触れる前に、AIの画面内で3〜4社への絞り込み——いわゆる「サイレント・ショートリスト」が完了してしまうのです。  もしそのAIの回答に自社が含まれていなければ?トラフィックが減るどころの話ではありません。競合が比較検討されていることすら認知できないまま、見えないところで失注が確定します。

SEOの順位を気にする前に、「AIに正しく認知され、推奨候補として選ばれることLLMOがビジネスの死活問題になる」理由はここにあります。LLMOとは、AI Overviews対策も含み、情報を提供する企業側が、ユーザーがどんなプロンプトを打っても自社がAIに選ばれ・推奨されるようWeb上の情報を最適化する方法です。

なぜ従来のSEO施策だけでは通用しないのかの疑問があると思います。しかし、「うちは検索上位にいるから大丈夫」という楽観論は通用しません。直近のアルゴリズム調査でも、AI Overviewsが引用するソースのうち、検索上位1〜10位のシェアは38%まで低下しています。11位以下のニッチな一次情報や特化型FAQが平気でピックアップされているのが現実です。

さらにAI Overviewsで重要なのは、AIが参照するシグナルの変化です。

  • 被リンクより「言及(Mentions)」: AI回答の露出相関では、被リンク(0.218)に対し、第三者サイト上での「ブランド言及」(0.664)が約3倍も強い相関を示しています。
  • クエリの長文化(平均23単語): Google検索の平均4単語に対し、AI検索では平均23単語の長文・複合条件で質問されます。単発キーワード対策ではなく、具体的な利用シーンや細かな疑問に即答できるコンテンツが求められています。

一方で、直近の各種の検証メタ分析により、「すべてのAI検索をひとくくりに対策する」アプローチの限界が明確に示されています。たとえば、ChatGPT Search: 回答文中の引用のうち、Google検索上位10位にランクインしているドメインはわずか8.2%にとどまります。また、ChatGPTとPerplexityで共通して引用されているドメインはわずか11%程度にとどまります。AIごとのアルゴリズムの癖に合わせた情報設計が必要です。今後は、生成AIごとのペルソナが必要になりますね。

ですから、「AI Overviews対策=SEO上位+Schema整備」「ChatGPT/Perplexity対策=Web全体でのブランド言及+BLUF構造+独自一次データ」というように、明確な施策の棲み分けたLLMO対策が不可欠です。

日本のBtoB市場だからこそ効く、4つの勝ち筋

では、私たちは明日から何をすべきなのか。先述の通り、AI検索対策は「Google系AI Overviews」と「対話型AI(ChatGPT/Perplexity)」の2つに分けて捉える必要があります。欧米の「とりあえずRedditでバズらせろ」を真に受けても国内では機能しません。日本のBtoBデータが示している現実は、極めて質実剛健です。

アプローチ1:Google系AI Overviewsを攻略するサイトの機械可読化

GoogleのAI Overviewsは、従来の強固なSEO基盤(検索上位)とSchema構造化データを好んで拾います。ここでは「マシン(AIクローラー)がいかにストレスなく情報をパースできるか」が勝負です。

1. 企業公式サイトの一次情報を徹底的に垂れ流す

国内BtoBのAI引用分析において、引用ソースの83.4%は「企業公式情報」が占めています。日本のLLMはハルシネーションを極度に警戒するため、公式の確定情報を手堅く拾います。

  • ファクトの垂れ流し(オープン化): 料金プラン、具体的スペック、他社連携の可否、さらには「自社に向かないケース(デメリット)」などのファクトを、資料請求フォームの奥に隠さずWeb上にすべて明記する。
  • BLUF構造の徹底: 見出し(H2/H3)の直下30〜60文字でダイレクトに結論・数値を言い切る(AIが引用するテキストの44%は冒頭30%に集中します)。
  • HTML比較表()の配置: スペック比較を画像バナーに閉じ込めず、プレーンなHTMLテーブルで組む。これだけでAIの引用率は約2.5倍に跳ね上がります。
  • テクニカル基盤の整備: JSON-LDによる構造化データ(FAQPage, Article, Organization + sameAs)の実装、llms.txtの整備、そしてJavaScriptを実行できないクローラー向けにSSR(サーバーサイド描画)を徹底する。
  • アプローチ2:ChatGPT / Perplexityを攻略する客観的裏付けと第三者言及

    Google検索の順位とはほぼ無相関(上位10位の引用はわずか8.2%)で動く対話型AIに対しては、自社サイトの外側にある「客観的な事実突合(クロスリファレンス)」が効いてきます。

    2. 国内4大比較ポータルを押さえ、事実を突合させる

    比較選定クエリにおいて、国内AIが参照する外部ソースの73.7%は「BOXIL」「ITreview」「ASPIC」「ITトレンド」の上位4ドメインに集中しています。

    AIは、自社サイトに書かれた単独の主張(「業界No.1」など)をそのまま信用しません。企業公式サイトの情報と、外部の比較サイトやレビューの情報を「クロスリファレンス(事実突合)」して裏付けを取ります。

    オウンドメディアの改修と並行して、これら主要プラットフォーム上のプラン情報や機能スペックを最新に同期させ、良質なレビューを蓄積しておくこと。これがサイレント・ショートリストに残るための防衛ラインです。

    3. イベントを「リード獲得」ではなく「AI選定の検証の場」にする

    米国では、AIで比較表を作った後にG2のレビューやRedditのコメントで事実検証を行います。一方、日本では「ベンダーに直接聞いて確かめる」傾向が極めて強いです。

    事実、我々の調査でも「候補をAIで絞り込んだ後に、イベントに出向く、あるいは問い合わせをして検証している」バイヤーの姿が見えてきました。

    つまり、これからのリアル展示会やイベントは「名刺をガンガン集めて押し売りする場」ではありません。「AIによってすでに2〜3社に絞り込まれたバイヤーが、最終確認に訪れる対話の場」へと位置づけが変わるのです。

    最終的なゴール:指名検索を取りに行く

    4. 指名検索の総量で勝負を決める

    「AIの回答内で完結されたら、クリック数が減って損ではないか?」という疑問もよく耳にします。しかし、データはその逆を示しています。

    AIの回答内で推奨されたユーザーの55.9%は、その直後にGoogle等でサービス名を直接「指名検索」して流入します。さらに、課題と解決策を理解した上で訪れるため、成約率は従来の4〜5倍(約16.9%)に達します。

    米国市場を見ていても、成果を出しているベンダーは実に地味です。

    • マシンが読むことを最優先にWebサイトを設計する
    • 基本情報はフォームを置かずにフルオープンにする
    • 自社に有利な比較軸が作れるよう、独自の市場調査データ(一次情報)を発信してAIに学習させる

    これらを愚直にやり切っています。

    なお、生成AIは進化の過程にあり、これらの対策も一度やれば永遠に通用するものではありません。主要AIプラットフォームにおける参照ドメインの急激なアルゴリズム変動も報告されています。イタチごっこにはなりますが、常に動向をウォッチし、対策をアップデートしていく必要があります。

    これはマーケティングではなく経営問題

    そして最後に強調したいのは、これはマーケティング部門だけで解決できる話ではないということです。なぜなら、AIが作成する無慈悲な比較表の上で、製品そのものが競合に勝っていなければ推奨されないからです。

    経営学者の楠木建先生がおっしゃるように、生成AIは「中央値」を出します。その中央値とは、実績があり、無難で、シェアの高い製品です。小手先のテクニックが剥がれ落ち、「本当に強い製品が、より選ばれる時代」がやってきました。

    自社の強みとファクトをWeb上に正しく配置し、AIを最強の営業パートナーに仕立て上げられるか。まずは一度、ターゲットとなる質問をAIに投げかけ、自社がどう語られているかを確かめることから始めてみてください。

この記事をシェア

// LET'S TALK

この記事に関するご相談、
受け付けています。

BtoB の広報・PR・マーケティング戦略について、無料でご相談いただけます。