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〜プロダクトファーストから脱却し、「顧客の進歩」と「真のジョブ」を特定する顧客開発〜
FaceBookなどで、BtoB企業の広告をみていると、見込顧客には絶対響ないだろうと思うことが多くあります。それはなぜかというと、プロダクトが弱いからです。というと、身も蓋もない話になりますが、課題は上流にあるのは確かです。プロダクトに明確な価値提案の定義がないため、マーケティングが出来上がったプロダクトから課題を捏造しているケースが多いと思います。課題は、ターゲットにとって、激痛でないと響かないのです。マーケティングが頭で考えても、現実離れして、その課題の定義はたかが知れているのです。
では、なぜプロダクトが弱いかというと、ターゲットにとってのMust Haveの機能が弱いのです。それの理由は、上記どおりターゲットの激痛が見つけられていないので、機能がNice To Haveに陥っているからです。それでは、絶対に売れないです。
ソリューションファーストの罠
価値提案(Value Proposition)は、プロダクトの魂となるものです。その第一歩は、ターゲットペルソナが抱える真の「課題」を特定することにあります。
しかし、実際の事業開発ではテクノロジーファースト・ソリューションファーストに陥り、「自分たちが作った(あるいは作りたい)ソリューションに都合の良い課題」を捏造してしまうケースが後を絶ちません。しかも、十分な検証をしていない。
これでは「売れるプロダクト」にはなり得ません。顧客の真の課題、しかも激痛を解決していないからです。「何でもできる」と訴求しているプロダクトの多くが躓く理由もここにあります。「何でもできる=ターゲットペルソナも解決すべき課題も特定できていない」ため、誰の心にも刺さらないのです。
課題は「現状の代替手段」から生まれる
書籍『Running Lean』でも触れられている通り、課題の特定において重要なのは、新しいソリューションの妄想ではなく「顧客が現在使っている代替手段(既存の古いソリューション)」の不満や限界を観察することです。
分かりやすい例が「移動手段」の進化プロセスです。
- 馬車(既存の手段)の課題: 速度が遅い、移動距離が限られる、馬の飼育コストや糞尿による衛生問題が発生する。
- 初期の自動車(T型フォード等)による解決: 馬車の課題を解消し、より高速かつ広範囲な移動を実現した(=第一段階の進歩)。
- 初期自動車の新たな課題: 個性(選択肢)がない、故障が多い、操作が難しい、給油インフラ(スタンド)が少ない。
- 現代の自動車による解決: 安全性・利便性の向上、多様なデザインや性能の提供。
- そして次へ: 現代の自動車が抱える「環境負荷・CO2排出」という新たな課題に対し、EV(電気自動車)等の次世代ソリューションが挑んでいる。
画期的なソリューションに見えるものも、本質的には既存手段の課題に対する改善や工夫の積み重ねです。例えばiPhoneも、既存の携帯電話やPDA(個人情報端末)が抱えていた使い勝手や機能の限界(課題)を再定義し、洗練させたものに過ぎません。
ゼロベースで造られる画期的なプロダクトなんか、めったにないのです。これは、イノベーションが、New Combinationと言われる所以です。
なお、課題には次の3種類があります。新規事業においておいしいのは、上記2つです。ただ、「最後のソリューションがわかっている顕在課題」についても、市場が大きければ、再ポジショニングやコスト戦略をとることができます。
- 潜在課題: 顧客が気づいていない課題(観察する必要がある)
- 顕在課題: 顧客は課題には気づいているが、解決方法がわかっていない
- ソリューションがわかっている顕在課題: 顧客は課題を認識し、解決方法も分かっている
ジョブ理論(Jobs to Be Done)と価格設定による解釈
この考え方は、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授が提唱した「ジョブ理論(Jobs to Be Done)」とも合致を示します。
「顧客は商品を購入するのではなく、生活や業務を進歩(Progress)させるために商品を『雇用(Hire)』する」
顧客が片付けるべき用事(=ジョブ)こそが真の「課題」であり、それを解決して自身を進歩させるためにプロダクトを雇います。プロダクト開発においては、「どんなジョブを片付けるために自社プロダクトが雇用されるのか」を徹底的に追求する必要があります。
また、価格を考える上でも重要になります。WTPって聞いたことはありますか?Willingness To Payの略で、お客様が喜んで払ってくれる金額です。このWTPが実際の価格より高ければ、顧客満足度が必要に高く、競争力があるということになります。
書籍「BCG流プライシング戦略」によると、WTPは、Next Best Competitive Alternative=NBCA(競争力のある次善の選択肢)が顧客にとっての価値の基準値になります。現行の代替品のベストのものです。その基準に、課題解決して進化する正の使用価値を足し、新しいソリューションに対して顧客が負うリスクやコストを引いたものが、WTPになるのです。
価格はプロダクトの一部です。全体の調和が取れた製品戦略を立てる必要があるということです。
事業開発チームが明日から実践すべきステップ
事業開発チームが主体になりますが、実践すべきは、Customer / Problem Fit(CPF)の徹底です。以下のようなことです。これは顧客開発とも言われます。
- 現行の代替手段(既存運用・競合)の徹底調査: 顧客が現在、自社ツールやスプレッドシート、あるいは手作業でどのように課題を回避しているか(代替手段)を観察する。
- 「ソリューションの機能」ではなく「顧客の進歩(Progress)」を言語化: 「この機能で何ができるか」ではなく、「これを使うことで顧客の業務や状態がどう変化・進歩するか」を定義する。
- 仮説検証インタビューの実施: 「こういう機能があったら欲しいですか?」という未来の質問(捏造を誘発する質問)ではなく、「先週、その課題に対して具体的にどう対処しましたか?」という過去の事実を聞き出す。
その後は、Problem / Solution Fit、そして、Product / Market Fitと進みます。
成熟している企業では、ソリューションありきで事業を開発することも多いかと思います。その場合も、ソリューションのMust Have機能を洗い出し、そのベネフィットを定義して、課題を仮説作成する必要があります。そして、上記のプロセスで仮説検証するのです。そうしないと、売れない製品を出し、マーケティングやセールスなどに多大な負担をかけてしまいます。モチベーションも落ちますね。
代替手段を探り、その激痛の課題を洗い出してみてください。新しいソリューションに繋げることができる可能性が広がります。その他、To BeとAs Isのギャップを特定して、その要因を分析して課題を特定する方法もあります。
いずれにしても、上流をしっかりさせないと、マーケティング活動はどうしても弱くなります。無理に広告をしても、プロダクトが弱いと生成AIには選択されません。ぜひ、企業一体になって、顧客開発を実践してください。